「Glober AI」が切り拓く新時代の翻訳技術 ~言葉だけでなく“語気”も自然に伝えるAI~
- 宣子 中島
- 4 日前
- 読了時間: 3分
Spark Labs Taiwan
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AIの翻訳や音声合成の技術が急速に進んでいるため、ブランドが海外市場に進出するときの言葉の壁は少しずつなくなってきているように見えます。しかし、現地の人と本当にうまくコミュニケーションをとりたい企業にとって、言葉をそのまま翻訳することは最初の一歩にすぎません。本当に大事なのは「話し方の細かいニュアンスや文化の背景」です。
「Google Ads」の元プロダクトマネージャー、楊鵬岳氏が立ち上げたスタートアップ「Glober AI」は、話し方のニュアンスやトーンを自動で調整するAIの仕組みを開発しています。映像の素材を変えたり、声を録り直したりせずに、ブランドの動画広告をそのまま現地の言葉や文化に自然に合わせることができるのが特徴です。現在、「Anymind」や「FunNow」といった企業がパートナー候補として名乗りを上げており、「SparkLabs Taiwan」のアクセラレーター・プログラムにも正式に参加しています。
話し方のニュアンスが合わないと、日本の人には怒っているように聞こえる?
「日本人は話し方のニュアンスにとても敏感です。敬語に直さないと、怒っているように感じられてしまい、広告の効果も出にくくなります」とGlober AIの楊鵬岳氏は話します。これまでも、多くの企業が翻訳に力を入れてきましたが、話し方のニュアンスが合わずに誤解を生み、文化の違いによるトラブルやブランドのイメージダウンにつながることがありました。
楊氏はGoogleにいたころからこの問題を強く感じていました。Googleでは広告の翻訳システムの開発を担当し、世界中のブランドの多言語対応を支えてきました。「形容詞ひとつの翻訳を決めるのに一日中話し合うこともありました」と笑います。しかしそれでも、動画や音声の中での話し方や状況を自動で合わせるのは技術的に難しい問題でした。
Glober AIが挑む次世代翻訳──言葉だけでなく“語気”も伝えるAIへ
従来の音声翻訳や言葉通りの翻訳とは違い、Glober AIは「話し方のニュアンスまで現地の文化に合わせる」ことに力を入れています。具体的には、以下のような工夫があります。
中国語の広告を日本語にする際、日本人に自然に感じられる敬語や話し方のリズムに自動で調整する
映像はそのままに、言葉の速さやリズム、間の取り方を言語ごとに調整する
現地でよく使われる言葉や文化的な話題を取り入れ、「まるで地元の人が話しているかのような」親しみやすさを出す
例えば、元の中国語広告が強い口調で話している場合、そのまま日本語にすると命令口調や失礼な印象になってしまうことがあります。Glober AIは音声モデルを使い、「やわらかく、それでいて力強い」敬語に自動で変換し、元の伝えたい気持ちや雰囲気を保つことができます。
SparkLabs Taiwanに参加し、アジアの国々向け話し方技術を拡充
2024年2月、Glober AIは台湾のSparkLabsのアクセラレーターに参加し、技術の実用化や製品開発を積極的に進めています。現在は台湾にデザイナーを配置し、技術や営業スタッフも増員中です。今後は台湾語やベトナム語などにも対応し、東南アジアや中国語圏のニーズに応えていく予定です。楊鵬岳氏は「現在、AnymindやFunNowなど多くのブランドや代理店と連携を進めています。将来的には映像制作会社や国際的なマーケティングチームとも協力していきたい」と語っています。

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