人型ロボット市場が急拡大、女媧機器人と祥鑫科技が新たな局面へ
- 宣子 中島
- 8月8日
- 読了時間: 3分
女媧機器人股份有限公司
AI進化の最前線!「人型ロボット」が拓く未来とは?
近年、人工知能(AI)の急速な発展により、ロボット分野は新たな局面を迎えています。なかでも、人間と同じ形をした「人型ロボット」が、テクノロジー業界で最も注目されるトレンドとなっています。最新のデータによると、中国国内の人型ロボット分野では、2025年上半期だけで77件もの資金調達が行われました。これはすでに昨年一年間の総件数を上回っており、市場の勢いと投資家からの高い関心が見てとれます。
投資が加速する人型ロボット産業
この活発な動きの背景には、さまざまな企業の戦略的な投資があります。
例えば、人型ロボットの部品供給などで重要な役割を担う祥鑫科技股份有限公司(以下、祥鑫科技)は、この1か月間で「女媧創造股份有限公司(以下、NUWA Robotics)」と「天肌科技」の2社に相次いで投資を行いました。
NUWA Robotics:ソフトバンク、アマゾン、鴻海(ホンハイ)といった世界的な大企業も出資・協力する革新的な企業です。共通の技術基盤を多くの製品に応用する「技術のプラットフォーム化」や、製造コストを徹底的に抑える「究極のコストコントロール」などを強みに、世界のロボット分野を牽引する存在になりつつあります。
天肌科技:設立間もないスタートアップ企業ですが、「巧手」と呼ばれるロボットハンド(ロボットの手の部品)など、主要な部品分野において独自のコア技術を有しており、将来が非常に期待されています。
2025年は「実験」から「実用化」へ
市場予測では、2025年は人型ロボットが「研究室での実験段階」から「本格的な商業化」へと移行する重要な年になると見られています。現在、世界の人型ロボット市場の規模は推定で約76億人民元(約1,600億円)ですが、この市場は驚異的なスピードで成長する見込みです。2035年には、1.12兆人民元(約23兆円)を突破し、年間平均成長率は30%を超えると予測されています。なかでも中国は、世界で最も成長が期待される市場です。2025年には市場規模が約53億人民元(約1,100億円)に達し、2035年には3,000億人民元(約6兆2,000億円)を超える可能性があり、世界の市場シェアの36%以上を占めるとされています。深圳市優必選科技股份有限公司(UBTECH)や杭州宇樹科技有限公司(Unitree Robotics)といった中国国内の企業が、大型の受注を次々と獲得しており、量産化に向けた動きが加速しています。
国の政策が後押しする産業の発展
中国政府も、この波をさらに加速させるべく動き出しています。政府機関である中華人民共和国工業情報化部(以下、工業情報化部)は、「人型ロボット革新発展指導意見」を発表し、2025年までに技術革新の基盤を整備し、ロボットの「脳」(AI制御システム)と「体」(ハードウェア)の両面における技術強化を目指す方針を示しました。
また、工業情報化部の大臣は、次世代のスマート端末(人型ロボットを含む)の発展を全力で推進し、技術開発、データ基盤の整備、製品の標準化を進めていくと強調しています。
市場と政策、両面からの追い風
政府による強力な支援策と、市場の活発な動きという二つの追い風を受けて、人型ロボット産業は現在、急速な成長期に入っています。この産業は、モーターやセンサーなどの主要部品を製造する「上流」、それらを組み合わせてロボット本体を組み立てる「中流」、そして完成したロボットが介護や物流といった実際の現場で活用される「下流」という、三つの段階から構成されています。サプライチェーン全体が活性化するなか、主要部品を供給する祥鑫科技のような企業は、この成長の恩恵を継続的に享受すると期待されています。
祥鑫科技は、NUWA Roboticsのような有力企業への積極的な投資を通じて、人型ロボット産業におけるエコシステム(関連企業間の協力体制)での戦略的地位を今後さらに強化していくとみられます。


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