智宝国際、映像IPの新たなエンジンを構築。「劇集文創」の設立により台湾文化の国際舞台進出を支援
- 宣子 中島
- 5月12日
- 読了時間: 3分
NADA HOLDINGS
台湾でACG(アニメ・マンガ・ゲーム)などのキャラクター作品を手がける代表的な企業「智宝国際開発股份有限公司(以下、智宝国際)」は、2025年7月から9月の第3四半期から、世界市場を対象にした新たなアニメやゲーム作品を20件以上、順次展開していくと発表しました。いわゆる「キャラクターIP(知的財産)」として扱われるこれらの作品は、3〜5年をかけて自社開発または海外から権利を取得して制作されたもので、同社の売上と利益を大きく押し上げる原動力になると期待されています。また、智宝国際は年内に株式市場への上場を予定しており、台湾初の「アニメやマンガなど“キャラクター作品”を主力とする企業」として注目されています。
同社は、ゲーム開発・運営を行っている台湾企業「宇峻奧汀科技股份有限公司」と共同で、多人数が同時に参加できるオンラインRPG(ロールプレイングゲーム)『ファイナルファンタジーXIV(FFXIV)』の繁体字中国語版の代理権を獲得し、人気のオンラインRPG市場に本格参入しました。さらに、RPGの分野で非常に有名な日本のゲーム開発会社「株式会社スクウェア・エニックス」と、「ガンダムシリーズ」などを手掛けた日本のアニメ制作会社「株式会社サンライズ(現・株式会社バンダイナムコフィルムワークス)」が手がけたアーケードゲーム(ゲームセンターで楽しめる対戦型アクションゲーム)『星と翼のパラドクス』のアニメ・映画化権を取得し、2025年には劇場版新作『AS ONE』を全世界で公開予定です。これらを通じて、同社のIP活用力と収益化能力が再確認されました。
2015年に設立された智宝国際は、これまでに100本を超えるアニメおよびゲームIPを開発・展開してきました。代表的な実績には、『軒轅剣 蒼之曜』『幻想三国誌 天元霊心記』『金肉人』『閃の軌跡 北方戦役』、日本での作品は『WITCH WATCH』『カナヘイの小動物』のスマホゲーム版などがあり、台湾および日本の市場で高い評価を得ています。同社の現在の資本金は2億6800万台湾ドルであり、台湾で唯一「日本のアニメ制作委員会の幹事資格」を有するIP企業として、日本側の意思決定に直接関与できるという業界内での大きな強みを持っています。
ACG産業のグローバル化が進む中、智宝国際は国際的な事業展開も積極的に進めており、現在は台湾と日本に合計11社の関連会社を展開しています。主なグループ企業は以下の通りです:
・「回歸線娛樂」:ACG IPの代理・配信・ライセンスを専門に担当。
・「翔英融創」:映像化と国際的な共同制作を担う中核企業で、映像子会社「劇集文創」の設立にも参画。
・「NADA JAPAN」および「INARI」:いずれも日本における100%子会社で、日本業界との連携と共同制作を強化するための橋渡し的役割を担う。
智宝国際の董事長である鄧橋氏は、今後も日本のアニメ制作体制である「制作委員会方式」を通じた連携をさらに深め、「Netflix」「Bilibili」「テレビ東京」など国際的な配信サービスとの協力関係を強化していく方針を示しています。台湾と日本が共同でキャラクターや物語の開発・制作を行うプロジェクトを土台に、欧米市場への展開も視野に入れた取り組みが進められています。 複数の企業が出資し合い、さまざまな配信サービスを通じて作品を同時公開することで、より広い市場への展開と安定した収益の確保を目指しています。
こうした取り組みにより、台湾発のオリジナル作品を世界に広める新たな仕組みを構築。キャラクターや作品を中心とした文化の輸出に加え、多方面へのビジネス展開を組み合わせることで、持続的な成長が可能な産業モデルの確立を目指しています。
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